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   『山家集』1118

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私とアインシュタイン

真貝寿明(しんかい・ひさあき)『現代物理学が描く宇宙論』共立出版、2018年9月。


一般向けの講座が元になったというだけあって、われわれ素人が知りたいことが、うまく説明してある本。

 

 

 

■ 物理の研究者である著者が、歴史上のいろいろな理論について率直に批評しているのが面白い。

 

たとえば、アインシュタインの理論についての驚嘆が素直に書いてある。

 

近代物理学が19世紀末にひと段落したころ、ドイツの特許局で働く若者だったアインシュタイン。1905年、26歳の一年間に彼が発表した5本の論文が、現代物理学の幕を開いた。

 

アインシュタインの特徴は、「こうであるはずだ」という強烈な演繹的発想を貫き、あくまでも簡明な証明と意味深い結論を求め続ける、一種の美学にあった。

 

「アインシュタインの1916年の論文を手にしてみると、現在のほとんどの教科書と同じスタイルである。つまり、後世の教科書ライターがどう頑張っても、アインシュタインの創ったストーリーがもっとも簡明でわかりやすく、理解する近道となっているのだ。」(91頁。太字は引用者)

 

「[多くの仮説が淘汰されてしまうなかで]すでに100年以上経った現在でも、アインシュタインの理論が最強のものとして生き延びているのは、研究者視点で考えても、実に驚きである。」(91頁。太字は引用者)

 

アインシュタインの場合、理論の筋道が「ストーリー」化している。ストーリーこそ、理論を人の心に固着させる「最強」のルートなのだ。

 

 

 

■ もうひとつ、共感したのは、ひとつの結論に達して満足したアインシュタイン本人も、そこから派生する含意をただちに理解することはできなかったことである。アインシュタイン自身がまさかと思うような地平が他の論者によって開かれ、アインシュタインは本気で反対したりしている。さもありなん。深い結論の含意は、本人にさえ予想できないことが少なくない。

 

アインシュタインにとって鬼子(おにこ)でありながら、1925年ころには多数の物理学者の手で現代物理学の一大分野に発展したのが、量子論であった。113頁

 

現代物理学の二大分野のひとつである相対性理論はアインシュタイン一人がつくり、もうひとつの量子論はアインシュタインの鬼子として生まれた。

 

 

 

■ 本書でもっとも感心したのは、アインシュタインのどこが優れていたかについて触れた部分である。

 

じつは、アインシュタインが特殊相対性理論を発表したころ、ローレンツやポアンカレも似た式を使って議論していた。アインシュタインがいなくても、数年以内に誰かが同じ結論に達しただろうと考えられるという。64頁

 

では、アインシュタインが特に優れていたのは、どこだったのか。

 

それは、「光速度一定」というひとつの斬新な原理に対象を収束させて論じるセンスであった。こうしたセンスがあったから、アインシュタインの理論は人々の想像力をとらえ、「物理学構築の思想として革命をもたらした」(64頁。太字は引用者)

 

「光速度一定」といった簡明な原理を提唱すると、その後の物理が堅固な足場を得ることになるし、一般人にも宇宙を認識するための焦点が与えられるような気がする。万人にとって宇宙がわかりやすく、魅力的になったのだ。

 

こうして、物理学が一個の「思想」になった。

 

では、ヒストリーやグラマーにおける「光速度一定」の原理とは、なんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の哲学 世界はトランスする | 00:01 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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