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   『山家集』1118

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「歴史」は history の翻訳語!

「歴史」という言葉の来歴を調べてみると、ちょっと驚く。

 

ウィクショナリーの「歴史」の項目によると、「史」という文字を「時間経過共に変化してゆく人間社会の、までに変化してきたその過程または、そのでの出来事」の意味で使った早い例は、司馬遷の『史記』(紀元前1世紀)という書名。

 

もともと「史」は 中+又でできた字で、木の枝などに神への祈りの言葉を書いたものを結びつけ(中)、それを手でもっている(又)様子から。つまり、ほんらいはそうした祭事にたずさわる人、公式記録をつかさどる役人のことを言った。そこから、そうした役人がつくる歴史書のことも「史」と呼ぶようになっていったらしい(『新漢語林』)。

 

司馬遷は公式記録編纂官=太史令であったため、彼の著述ははじめ『太史公書』と呼ばれたという(ブリタニカ)。同書が『史記』と呼ばれるころには、「史」という字は記録役人というほかに<過去の出来事、物事の由来、そしてそれを記した書>といった意味も込められるようになったのかもしれない。

 

次に「歴」という字は、屋内に稲を整然とつらねた形に「止」つまり足をつけた字で、「ほどよく並べた稲束のあいだを数え歩くさま」を表しているという(『新漢語林』)。そこからの連想か、「歴」の字を「飛び越える」の意味につかった例がある(「不歴位」=「位を超えず」孟子、離婁下)。だとすれば、この「歴」はトランス(超越)である。そういえば「歴然」という表現には、「断絶して」「飛び越えて」というニュアンスがある。

 

以上のことから、「歴史」という文字からは、過去の出来事、物事の由来(史)をきちんと調査・整理して認識し(歴)、きちんとした人がそれを書き述べたもの(史)といった意味が考えられる。だがじっさいには、明治以前に「歴史」という表現はあまり使われず、「史」の一字で「歴史」の意を表すのが普通であった。

 

「歴史」という語が普及したのは、明治初期に英語の history の翻訳語とされて以降であった。

 

「歴史」は、古くからの漢語というより、英語の history から日本人がつくった近代の造語なのである。

 

和製漢語「歴史」は、中国やベトナム、朝鮮半島にも輸出され、いまや東アジアの共通語彙になっている(https://ja.wiktionary.org/wiki/歴史)。

 

明治になって、和学や和算が西洋流の言語学や数学に乗り換えたように、歴史学も過去とは断絶した近代の概念だということになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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