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   『山家集』1118

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「生産」から生活へ 人間が人間を生産する その1

翻訳上の小さな問題から話を始めたい。

 

マルクスが残した草稿「経済学批判序説」(執筆1857年。マルクス39歳。生前非公開)の冒頭は、比較的新しい筑摩書房版の訳では、次のようになっている。

 

 

 

「(1)生産

 

(a)当面の対象は、まず物質的生産(である)。

 

社会のなかで生産する諸個人 ー したがって諸個人の手でなされる社会的に規定された生産こそが、当然ながら出発点である。」

 

(筑摩書房マルクスコレクションIII、2005年刊、142頁。太字は引用者。以下、「筑摩版」と呼ぶ)

 

 

 

この部分のマルクスの原文は、次の通りである。

 

 

 

1. Produktion

 

a) Der vorliegende Gegenstand zunächst die materielle Produktion.

 

 

In Gesellschaft produzierende Individuen - daher gesellschaftlich bestimmte Produktion der Individuen ist natürlich der Ausgangspunkt.

 

 

(http://www.mlwerke.de/me/me13/me13_615.htm#Kap_1 太字は引用者)

 

 

 

上記の部分の邦訳は、筑摩書房版のほかにも何種類かあり、たとえば岩波文庫版(初版1956年)では、

 

 

 

 

「一 生産

 

a) ここでとりあつかう対象は、まず物質的生産である。

 

社会で生産をおこなっている個々人、したがって個々人の社会的に規定されている生産が、いうまでもなく出発点である。」

 

(287頁。太字は引用者)

 

 

 

 

となっている。他に、大月書店版や新日本出版社版も、「個々人...生産」となっており、筑摩版に類似している。

 

参考のため、この部分の英訳を探してみると、次のような例がある。

 

 

 

1. PRODUCTION 

    

 

 

a) To begin with, the object before us is material production. 
    

 

Individuals producing in society -- and hence socially determined production by individuals -- is of course the point of departure. 

 

 

(http://www.marx2mao.com/M&E/PI.html#intro  太字は引用者)

 

 

 

ここでは明確に、「個々人による生産 production by individuals」となっている。原文の "Produktion der Individuen" を、上記のように筑摩版が「個々人の手による生産」と訳したのは、英訳と同様、<個々人による生産>、つまり<個々人生産する>という意味を明確にしようとしたからであろう。岩波文庫版など、他の日本語訳も、<個々人生産する>という意味に理解したうえでの訳であろうと思われる。

 

このように現行の翻訳は、すべて "Produktion der Individuen" を「諸個人生産すること」ととらえている。はたして、この理解でいいのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 

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