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カジノ資本主義と『マルクス最後の旅』

ハンス・ユルゲン・クリスマンスキ(猪俣和夫訳)『マルクス最後の旅』(太田出版、2016年)

 

作者はドイツの社会学者で、本書はマルクス最後の一年間(1882〜1883年)を描いている。

 

妻を亡くしたマルクスの前に、架空の若い女性を登場させたりしているが、北アフリカのアルジェでの療養やモンテカルロでのカジノへの参加など、基本的な部分は史料にもとづいた事実。マルクスを悩ませた皮膚病の治療の様子などもリアルで、セミ・ノンフィクションといった筆致。

 

印象に残ったところをひとつだけメモすると...

 

『資本論』第一巻、第二巻でのマルクスの関心は、商品の生産と流通というふたつの領域にあり、とくに第一巻は生産の領域が中心だった。このことを、作者クリスマンスキは、マルクスの次の文章で表す。

 

「労働力の消費[=商品の生産]は、ほかの商品の消費と同様、市場ないし流通領域の外で行われる。そこで、私たちはこの大勢の人たちがたむろし騒々しく人目の多い領域[市場・流通]を離れ、お金を持っている人と労働力を持っている人の後について、入り口に『無用の者、入るべからず』と書いてある秘密の生産の場に行くことにしよう」(『マルクス最後の旅』56頁。太字は三浦。出所は全集第23巻、S.189)

 

だが、「最後の旅」で株式投資を試して大金を得 94頁、モンテカルロで 「カジノ資本主義」の力を目の当たりにしたマルクス92頁 は、生産と市場だけでなく、貨幣的投機が資本主義を引っ張って行くと予感する。14、89頁

 

金融取引は、もはや生産と市場の g-w-g' (貨幣ー商品ー貨幣’)ではなく、g-g' (貨幣ー貨幣’)の世界なのだ。32頁

 

エンゲルスが編集した『資本論』は、第三巻で利子などを扱っている。だがマルクス自身は資本投機の問題を十分解明する前に世を去った。

 

本書は、この資本主義的な投機というものについて、エンゲルスの次の言葉を最後に引用している。

 

 

「誰だって相場師でありながら社会主義者であることはできます... 私は以前、ある工場の共同出資者だったことがありますが、それについて弁明する気などさらさらありません。... 私は、明日証券取引所で大儲けし、それでヨーロッパやアメリカの党に大がかりな資金提供ができるとわかれば、勇んで取引所に行きますよ」(146頁。出所は全集第35巻、S.444.)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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