ごきげんようチャンネル


あきらけき かがみにあへば すぎにしも いまゆくすゑの こともみえけり

         大鏡


<< 史的唯物論の暫定的総括 社会の生産諸力が社会の成員に投射して社会構成体をつくる  | main | 心の実在 >>
史的唯物論への補論 『諸結果』から

1863年ごろ、45才のマルクスが書いた草稿に、「新しい社会構成体」が生まれるプロセスを書いた部分がある(森田茂也訳『資本論第一部草稿 直接的生産過程の諸結果』光文社古典新訳文庫、2016年)。

 

『経済学批判』の史的唯物論の「定式」を補う記述なので、以下、注意すべき箇所を太字にしながら引用する。

 

 

「資本関係一般が生じるにあたっては、社会的再生産の一定の歴史的段階と形態とが前提されている。以前の生産様式の内部ですでに、交通・生産手段と種々の欲求が、古い生産諸関係を乗り越えて資本関係への転化を迫るほどに発達していなければならない。

 

しかしそれは、資本のもとへの労働の形式的包摂が起こるのを可能にする程度に発達していればよい。だが、まさにこの変化した[生産]諸関係を土台にして、独自に変化した生産様式が発展してくる。

 

この変化した生産様式は、一方では新しい物質的生産力をつくり出し、他方ではその[物質的]生産力を基礎にしてはじめて自らも発達するのであり、それによって実際に自分のための新しい現実的な諸条件をつくりだすのである。こうして全面的な経済革命が開始される。

 

一方ではそれ[経済革命]は、労働に対する資本の支配のための現実的諸条件をはじめてつくり出し、完成させ、それにしかるべき形態を与える。

 

他方では、この変革によって労働者に対立的な形で発展させられた労働の生産力、生産諸条件と交通諸条件は、資本主義的生産様式の対立的形態を止揚する新しい生産様式のための現実の諸条件をつくり出し、こうして、新たに形成される社会的生活過程のための、それとともに新しい社会構成体のための、物質的土台をつくり出すのである。」(306ー307頁。太字は引用者)

 

 

以上の文から、次の点に気づく。

 

新しい生産諸関係への転化の前提として、「交通・生産手段と種々の欲求」があげられていること。とくに、「欲求」という観念的要因が明記されていること。

 

ここに登場するキーワードの多くは、常識的な意味で使われていないこと。ここで「生産様式」とは、経済面つまり物質を対象にした労働/生産の編成方式のこととも読めるが、社会が自己を生産し超越するトランス全体(Leben)のこととも読める。「生産諸関係」とは、社会の物質面の生産だけでなく、その交通や消費まで包摂し、かつ物品や身体だけでなく人間の組織や観念的産物を含む、社会的生活全般の再生産のための、規範を指している。

 

後半にある「労働の生産力、生産諸条件と交通諸条件は...現実の諸条件をつくり出」すという表現は、社会を変革する主体が「生産力」であることを述べている(残りのふたつは「条件」)。

 

ここでは「労働の生産力」となっているが、より広くみて「生産諸力」とは、物質的財貨や人間身体や社会組織や意識諸形態を生産するだけでなく、財貨・身体・組織・表現を交通させ消費する力を含んでいるとみるべきだろう。つまり、土台・上部構造・意識諸形態(マルクス『経済学批判』序文「定式」)がもつ生産力・組織力・表現力を総合した力が、「生産諸力」である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









http://soundsteps.jugem.jp/trackback/4491
#誰が書いてるの?
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    
<< July 2018 >>
-->
#新しい記事
#過去の記事
#著書/共著
#著書/共著
#著書/共著
#著書/共著
#著書/共著
#著書/共著
#著書/共著
敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人
敗北を抱きしめて 上 増補版―第二次大戦後の日本人 (JUGEMレビュー »)
ジョン ダワー, John W. Dower, 三浦 陽一, 高杉 忠明
#著書/共著
敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人
敗北を抱きしめて 下 増補版―第二次大戦後の日本人 (JUGEMレビュー »)
ジョン ダワー, John W. Dower, 三浦 陽一, 田代 泰子, 高杉 忠明
#コメント
#トラックバック