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         大鏡


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パルミラ遺跡の修復 ISIS による破壊も歴史の一部

シリアで歴史遺跡の保存修復をしている組織のスタッフが来日し、大学で彼らの話を聞いた。

 

そこで、ひとつ感心したことがある。

 

イスラム過激派の ISIS が、有名なパルミラの遺跡をひどく破壊した。その修復をどうするか、いまシリアで議論が行われている。

 

その議論のなかで、

 

 

「破壊も歴史の一部だ。破壊以前にもどすことだけが修復ではない」

 

 

という主張がある、というのだ。

 

なるほど、これはひとつの見識である。

 

遺跡をすべて ISIS による破壊以前にもどしてしまうと、破壊がなかったかのように見え、そのぶん歴史認識が空想的になりかねない。

 

過去の遺物は、われわれの歴史認識を空想的にしないために不可欠な、物質的存在である。そして、それが破壊されたり盗掘されたことじたい、歴史の物質的な痕跡である。

 

しかし同時に、遺跡をすべてISIS 以前にもどすことも、ひとつの見識である。

 

第二次大戦中、連合国軍による空襲で倒壊したドレスデンの聖母教会は、2005年に再建・修復が終わった。それはかつての敵どうしの和解の象徴としての再建であったという。

 

シリアの場合、ISIS の蛮行を完全に否定するわれわれの意志の表れとして、パルミラ遺跡を全面的に修復するという選択肢もあるだろう。

 

 

歴史とは、ある時代をリアルに認識することだけではない。その時代が終わったあと、その認識や痕跡を、われわれがどのように扱うかも、歴史の重要な局面になる。

 

遺跡の修復とは、そして歴史の認識とは、現在の人間の意志の表れなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 03:28 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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