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         大鏡


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浄土教が他力本願を主張できたのは、菩薩になる時点を往生後にズラしたから

佐々木閑『集中講義 大乗仏教』(NHK出版、2017年)に、浄土教の特徴が書いてあった。

 

第一に、数ある仏国土のなかでも最高の仏国土を発見したこと。

 

この世界とは別の場所に、無数の「仏国土」が存在する。それぞれの仏国土に一人ずつブッダ(覚者・如来)がいて、自分の仏国土を主催している。

 

そのように数ある仏国土のなかでも、阿弥陀如来というブッダがいる仏国土(極楽浄土)は最高である。

 

なぜなら、極楽浄土にやってきた命あるものは、阿弥陀如来を拝んで菩薩になったあと、別の仏国土に自由に行き来でき、無数のブッダを次々に拝めるという特典があるからだ。

 

この特典は、阿弥陀如来が菩薩時代に約束されたことである(大無量寿経 第九願、第二十三願)。菩薩がブッダになる修行のなかでも、もっとも効果的なのは、ブッダを拝むこと。だから、たくさんのブッダが拝める極楽浄土は、最高の仏国土なのだ。114-115頁。

 

第二に、菩薩になる時点をズラすことによって、他力本願を主張したこと。

 

般若経典や法華経では、「過去に私たちはブッダと出会っているのだから、すでに私たちは菩薩であると考えた」111頁。こうした経典では、私たちはすでに菩薩になっており、何度も生まれ変わりながらブッダになるための修行をくり返すことになる。

 

ところが浄土教では、

 

私たちはまだ菩薩になっておらず、これからブッダと出会い、菩薩になる」ととらえた。111頁。

 

つまりわれわれは、この世で菩薩になるのではなく、上記のように極楽浄土で阿弥陀如来を拝み、そこで菩薩にならせてもらってから、ようやく自分もブッダになる修行をはじめるのである。


だから私たちは極楽浄土への往生だけを阿弥陀如来にお願いすればよく、この世で菩薩として修行する必要はない。

 

この世の私たちは、あなたも一緒に極楽浄土に往生しませんかと、周囲に呼びかけるだけでよい(往相回向 おうそうえこう)。そして往生し菩薩になったら、再びこの世に生まれかえってくることもあろう。そのときわれわれは菩薩として人々を導き、救うのだ(還相回向 げんそうえこう)。

 

 

... 浄土教とは、この驚くべきロジックの発見であった。

 

他力本願とか、輪廻とか、悪人(煩悩だらけの人)正機といった思想の真意は、以上のように理解するとわかりやすくなる。

 

菩薩になる時点をズラすことで新しい思想が生まれ、ちがう生き方が提案されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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