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邪馬台国は畿内の「ヤマト国」 ループ効果がもつ歴史的パワーについて

岸本直文「倭における国家形成と古墳時代開始のプロセス」『国立歴史民俗博物館研究報告』第185集、2014年2月所収。

 

https://www.rekihaku.ac.jp/outline/publication/ronbun/ronbun8/pdf/185012.pdf

 

 

日本列島における「国家」形成のプロセスについての論考。多岐にわたる考古学の成果を統一的観点から見直した意欲作。

 

それによると、「邪馬台国」とは、弥生後期に畿内に出現した広域的な「ヤマト国」のことであるという。

 

地域間戦争を経て、紀元後200年ごろ、そのヤマト国を中心に西日本の諸地域圏が連合して結成したのが「倭国」であり、この連合国家が、日本列島における「国家」の出発点となった。そして「倭国」が成長していくプロセスが、古墳時代であった。

 

では、なぜ倭国のなかでも「ヤマト国」が有力になったのか。岸本論文は、平野面積の大きさ、耕地の開発が進んでいたことをあげる。

 

 

「畿内は,東海地域とならんで列島において平野面積が大きい地域であり,ここでは潜在的な生産力が高かったことが確認できればよい。基礎となる農業生産力からすれば,畿内がひとつにまとまることで,列島の中で最有力となる潜在的な実力を有していたとみる。」

 

 

「畿内がひとつにまとまる」とは、おもに政治的統合を指しているのだろうが、私は、畿内の地理的な多様性と一体性も、ヤマト国が「ひとつにまとまる」条件になったのではないかと思う。

 

この論文には、畿内の地図がのっている(図2)。それには大阪・京都・奈良の平地をループ状につなげるラインが引かれており、この地域がひとつの経済圏をつくっていることを示唆している。

 

じっさい、この地域には大和川・木津川・淀川などによる輸送の便があり、西には大阪湾、東には琵琶湖があって、外部との水運のつながりも確保できる。つまり、地域内外の多様な物産や人間が、ループに沿って円滑に交流できる条件があった。

 

このように、ループをなす流通ルートがあると、左右どちら周りでも移動できるため流通量が増える、三角貿易的な売り買いを重ねながら効率的に利益を得て帰還できる、といった効果が期待できる。それだけに、一帯を政治的に統一しようとする動機も高かったであろう。

 

古代の都が、どれもこの地理的範囲内で建設されたのは、資材の運搬などの便が関係していたのだろう。

 

 

 

流通のループといえば、本州を沿岸沿いに一周していた江戸時代の廻船システムを思い出させる。中国の大運河網も、こうしたループ効果をもたらしたかもしれない。

 

トランス・ヒストリー(人類普遍史)の観点からいうと、いろいろな地理的・産業的条件のもと、この種のループ(循環)型の経済圏が発生した地域は、人と物の移動が盛んになり、政治的にも統一がすすみ、有力となる可能性がある、と言えそうだ。

 

 

 

 

 

...

 

 

 

 

以下、参考として、岸本論文から引用。

 

 

「...近畿地方の弥生土器は,前期の土器を母とし,器形・口縁部形態・紋様など,それぞれの地域で 独自化が進んでいたが,それが後期に「第V様式土器」に斉一化する。約 500 年を要して変化を遂げてきた日常土器の共通化は,統合を図る力が働かなければ成し遂げられないであろう。

 

「第V様式土器」を主体的に生みだしたのは中河内・大和南部であり,この地域の拠点集落が存続することから,中河内・南大和の主導勢力が畿内圏を形成したとみる。...

 

「第V様式土器」圏拡大の内実は,主導勢力による拠点集落の解体と,集住していた人々を分散居住させる集落再編をともなう畿内圏の統合であろう。また,それぞれの地域で高地性集落が一時的に現れることから,それは武力的圧力をかけての覇権行為であったとみる。 またそうでなければ,約 500 年存続した拠点集落を放棄させる強制力を説明できない。

 

こうして近畿地域がほぼ「第V様式土器」圏となる。令制下の畿内につながる地域圏の原型は, 1 世紀の「第V様式土器」圏にさかのぼるのであろう(図2)。

 

 

...弥生時代後期の畿内社会は,河川ごとに拠点集落が分布し,それらが並立する中期までの弥生社会を大きく変化させ,それまでにない広域の地域圏を生み出している。...弥生時代後期には,北陸や東海までの西日本の諸地域で,同じように広域地域圏の形成が進む。...弥生後期社会の本質は西日本における広域の地域圏形成にある。... 後期後葉にかけて個性的な土器様式圏がでそろうことに,畿内で見たような地域的統合の進行を考えてよいだろう。地域圏の形成は,特有の墳墓や青銅器の分布からも確認することができる。...

 

この「第V様式土器」圏として把握される畿内圏が,のちに〈魏志倭人伝〉に「邪馬台国」と表記されるヤマト国であろう。...以下,畿内圏でなく「ヤマト国」とする。

 

ヤマト国形成の背景には,中期前半以来の武器の発達にうかがえるように,畿内における農耕社会の進展にともなう地域内の抗争が既に進んでいたこと,それに加えて鉄器化の進行が大きく作用したと考えている[都出編 1998]。鉄素材は朝鮮半島南部に依存することから,その安定した確保のためには,他地域との関係構築が不可欠である。水系ごとに拠点集落が並立する社会で対応することは不可能であり,より強力な主体を作り上げ,他地域とわたりあっていかなければならなかっ たと思われる。鉄器化が地域圏の形成を促した蓋然性は高いとみる。...

 

北部九州では中期までの枠組みが基本的に継承され,より広域の地域的統合に進まなかったのに対して,それ以東の西日本社会は,より広域の地域圏の形成を急速に進めたのである。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 10:15 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
岸本論文の非論理性について

岸本論文は、「1990 年代の三角縁神獣鏡研究の飛躍により,箸墓古墳の年代が 3 世紀中頃に特定され,〈魏志倭人伝〉に見られる倭国と,倭王権とが直結し,連続的発展として理解できるようになった。」と論断されていますが、これは魏志倭人伝にヤマト国が出てくるなどという基本的な事実誤認に基づく誤断というしかありません。下記の点もそれを証しています。昨年来、伊都国から弥生期の硯も三件以上出土し、卑弥呼の文字外交が裏付けられています。ヤマト国からは、絹も鉄も硯も出土していません。かつて、鉄は錆びるからと言われていましたが、硯は錆びません。

1.弥生時代に「ループ(循環)型の経済圏が発生した地域」は九州北部と韓半島南部の海洋国家圏で、倭(チクシ)を中心とした倭(イコク)です。そして、これが破綻を迎えるのは663年の白村江の戦いに於ける倭国の全面敗北です。この戦いには大和王権は参加しておらず、その後天智・天武による九州王朝の簒奪により、701年に初めて近畿大和王権が大宝年号を建元(『続日本紀』の文武天皇大宝元年三月条(701年))しています。建元とは初めて年号を建てるのであり、それ以前は九州年号が使用されています。

2。近畿大和政権は古事記、日本書紀に見る通り三種の神器(宝物)を奉ずる政権で、銅鐸を神器とする政権ではありません。

3.畿内の前期古墳の編年が「邪馬台国」畿内説を「保証」するかのように3世紀前半にまで古くされているのですが、その編年の根拠の一つとされているのが、弥生時代と古墳時代(布留式土器)の中間に位置するとされている庄内式土器です。この庄内式土器と纒向型前方後円墳が時代的に重なり、これを「邪馬台国」畿内説の根拠とされているわけです。そして、この纒向に全国の土器が集まっていることや、纒向の庄内式土器や大和の布留式土器が全国に伝播していることを根拠に、纒向(大和)が倭国の中心国「邪馬台国」と説明されています。
 こうした「邪馬台国」畿内説の「根拠」とされている庄内式土器や布留式土器について、日本各地に散見する布留式土器は畿内の布留式が拡散したのではなく、初期大和政権の拡張と布留式土器の広がりとは無縁であることが胎土観察の結果、はっきりしてきた。(「庄内式土器研究XIX」1999年、米田敏幸氏の論文等による。)
庄内式土器研究会の研究成果は「邪馬台国」畿内説の根拠とされてきた土器についての決定的反証となっています。
「畿内出土庄内式土器の真実」(http://www.furutasigaku.jp/jfuruta/nikki11/nikki879.html)■
| YAGURUMA"剣之助" | 2018/04/29 4:38 PM |









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