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         大鏡


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軍隊の破壊労働は抹消効果を生む

軍隊づくり=戦争の主体づくりは、組織すなわち上部構造づくりであり、物質すなわち土台づくりでもある。兵器、兵舎をつくり、人間の能力をつくる。<軍隊は大人の学校>といわれる所以である。

 

戦争になると、軍隊は破壊労働ともいうべき特殊な労働をする。それは、運輸労働に似たところがある。

 

「運輸労働が生み出すものは場所変換という<有用効果 Nutzeffekt >である。この有用効果は運輸過程と不可分に結ばれており、運輸過程はこの有用効果の生産過程であると同時にその消費過程でもある」(『資本論辞典』青木書店、1966年、5頁)

 

この言い方でくと、軍隊の場合、

 

《軍隊の破壊労働が生み出すものは人間・構築物・地形・資源・食料・燃料などの破壊という<抹消効果>である。この抹消効果は破壊過程と不可分に結ばれており、破壊過程は抹消効果の生産過程であると同時にその消費過程でもある》

 

軍隊は、戦地で橋や鉄道、道路を建造することもある。それは破壊労働を行うための建造である。

 

再び、運輸労働の場合。

 

「したがって、この有用効果は運輸過程から独立した使用物としては存在しない。有用効果の交換価値は、他の商品の交換価値と同じく、その生産において消費された労働力および生産手段の価値に、運輸労働者がつくりだした剰余価値を加えたものによって規定される」(同上、5頁)

 

軍隊の破壊労働では、

 

《したがって、この抹消効果は破壊過程から独立した使用物としては存在しない。抹消効果の交換価値は、その生産において消費された労働力および生産手段の価値に、破壊労働者がつくりだした剰余価値を加えたものによって規定される》

 

運輸労働では、

 

「もしこの有用効果が個人的に消費されれば、有用効果の価値は消滅する。もし生産的に消費されれば、その価値は追加価値として、運輸された生産物に移される。」(同上、5頁)

 

これは軍隊でも同様で、

 

《もしこの抹消効果がそのまま放置されるか、個人的に消費されれば、抹消効果の価値は消滅する。もし抹消効果が生産的に消費されれば、抹消効果の価値は破壊されたものの上に作れられた生産物に移される》

 

 

もうひとつ、軍隊の労働で特徴的なのは、自己を運搬する労働がふくまれることである。これは労働者が自己を運搬するという意味で特殊な運輸であるが、次のような運輸一般のロジックが適用できる。

 

「もちろん、運輸は生産物の量を増加し、質を変化させるものではない。往々にして生ずる量の減少や質の悪化は、目的に反して生じたものにすぎない。諸物の使用価値はその消費においてのみ実現されうるものであり、消費するためには、場所の変換を要することもある 」(同上、5頁)

 

上海から南京まで、300キロ余りを強行進軍させた南京攻略戦で、日本軍が「質の悪化」をみせたことを思い出す。

 

 

...

 

 

破壊労働の特徴として、それは生産物ではなく抹消効果を生むこと。抹消効果は生産と消費が同時におこなわれること、この抹消効果がのちに有用に活用されるかどうかで破壊労働の価値の存滅が決まること。破壊労働では、みずからを運搬する労働が重要な部分を占めること、といったことがわかる。

 

以上は物質=土台面の話である。さらに上部構造の作動としての、意識諸形態(戦争犯罪をふくむ)としての、戦争という面も吟味する必要がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の歴史 トランス・ヒストリー | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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