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みにつもる ことばのつみも あらはれて こころすみぬる 三重(みかさね)のたき

   『山家集』1118

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概念は感覚がつくるのではなく、社会がつくる 認知言語学の錯誤

たとえば英語の前置詞 over を理解させるために、図やイラストを示して人間の身体感覚に訴えようとする本や辞書がある。

 

視覚からover へ、つまり読者を<感覚から概念へ>と上昇させようという戦略である。

 

ところが英語の非ネイティブには、あらかじめ over の概念はないから、感覚に訴えてもなかなか概念には到達しない。

 

実は<感覚から概念へ>の上昇は、社会的におこなわれるプロセスである。音声・文字という感覚的な媒体によって多くの人が概念を表現しあうなかで、いちばんふさわしい表現が選択され、概念とその表現が社会的に確立する。

 

言語は、そのつどの視覚的な認知に頼っているのではなく、このようにあらかじめ社会的に確立した概念を規範にしている。われわれが言語で直接つかっている感覚は、視覚像のような認知的感覚ではなく、概念の音声・文字が喚起する表象的感覚である。

 

認知は言語表現のきっかけのひとつにすぎない。心内の意識を概念的に把握し、音声・文字という感覚的なものへと変換するのが言語である。つまり言語をつかう個人は、<概念から感覚へ>と下降するのである。

 

言語の規範は、認知ではなく概念である。概念を規範にするからこそ、われわれは「11月」とか「マイナス」といった抽象的表現を活用できる。

 

認知言語学の本を開いたら、そこで扱われている語彙は、たいてい視覚的対象があるものだろう。視覚的対象を見つけにくい「概念」という抽象的概念を、認知言語学があつかえる日は、いつ来るだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 希望の文法 トランス・グラマー | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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