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ファラデー『ろうそくの科学』(1861)の真実

 

ファラデー『ろうそくの科学 The Chemical History of a Candle』(1861年)は、いまも科学少年・科学少女を生みつづけている名講演録(英国王立研究所にて)。

 

ファラデー(Michael Faraday, 1791 - 1867)はイギリスが生んだ大化学者で、私は化学が専門の大学同僚から、「ファラデーは、ろうそくの科学だけじゃない。化学史では本当に偉い人なんだ」と教えてもらったことがある。

 

『ろうそくの科学』を読んでみると、日本では幕末にあたる時期に、ヨーロッパではこれほど科学的な世界観がつくられていたことに驚く。カント、ヘーゲル、マルクスといった19世紀の思想家が、当時の自然科学の発展に常に注目していたのもうなづける。人間や社会にかんする思想は、いつも自然観とペアで発展する。

 

『ろうそくの科学』は、今日の地球温暖化問題にもつながっており、夏休みの子どもの読書にも適している。

 

以下、講演のなかのいちばん面白いところを要約してみよう。

 

 訳文は、http://www.genpaku.org/candle01/candlej6.html を元にさせてもらったが、読みやすくするため、主旨を変えない範囲で、かなりの省略と字句の変更をほどこした。

 

 

 

 

 

 

さてここで、わたしたちの研究対象のとてもおもしろい部分にみなさんをお連れしなければ。

 

それは、わたしたちの体内で起こる燃焼についてです。

 

わたしたちは一人残らず、生き物としてロウソクによく似た燃焼プロセスをもっています。

 

もともと炭素は、空気に触れても勝手に燃え出したりしません。ところが、肺の中に空気が入ったとたん、炭素は酸素と結合します。人間は凍死寸前になるような低温でも呼吸によってすぐに炭酸ガスを生む。だからうまく生きられるわけです。

 

この炭素のおもしろい働きがどれほどのものか、お話ししたら驚きますよ。ロウソク一本で、4時間、5、6、7時間でも燃えるでしょう。すると、一日で炭酸ガスになって空気中に出ていく炭素がどれほどになることか! 呼吸するわたしたちから、どれほど炭素が出ていくことか! これほどの燃焼や呼吸があると、すさまじい炭素が変換されているはずです!

 

人一人は、24時間で炭素200グラムを炭酸ガスに変換します。馬は24時間で炭素を2.2キロ燃やして、自然な体温を保ちます。温血動物はすべて、このようにして体温を保つんです。その結果、空気中で行われている変換は想像を絶するものになります。548トンの炭酸ガスが、ロンドンの呼吸だけで毎日生産されているわけです。

 

それはどこへ行くんでしょうか? 空中にです。炭素が燃えると、それは気体になって大気に放たれます。大気はすばらしい乗り物で、炭酸ガスを他のところに運んでいってくれる。

 

でも、そうしたらどうなるんでしょうか。

 

すばらしいことがわかっています。呼吸で起きた変化は、われわれには有害ですが(だってわたしたちは、同じ空気を二回以上は呼吸できませんから)、地表に生える植物や野菜にとっては、それがまさに命の源になっているんです。一方にとっての病気が、相手に健康をもたらすのです。

 

水の中でもそうです。魚は空気から水にとけた酸素を呼吸します。そして炭酸(二酸化炭素)を作って、それがめぐりめぐって、動物の王国と植物の王国をお互いに依存させるというすばらしい仕事をするわけです。

 

したがって、わたしたちは仲間の存在物すべてに依存しているわけです。自然はすべてお互いにいろんな法則で結びあわされて、その一部が別の部分に貢献するようになっているわけです。

 

さて、講義の終わりにあたって、申し上げられることといえばこんな希望を表明することだけです。

 

あなたたちも、自分の世代において、ロウソクに比べられる存在とならんことを。あなたたちがロウソクのようにまわりの人々にとっての光明となって輝きますように。それによって、小さなロウソクの美しさに恥じない存在となりますように。

 

 

 

 

最後に、ブッダが語ったという「ろうそくのたとえ」を書いておこう。

 

一本のろうそくで何千本ものろうそくに火を灯すことができる。しかし、それで一本のろうそくの火の命が短くなるわけではない。幸福も、分かち合うことで減ることはない

Thousands of candles can be lighted from a single candle, and the life of the candle will not be shortened. Happiness never decreases by being shared.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 今さらながら現代サイエンス | 09:42 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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