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超直訳にも名作はある  イブ・モンタン自叙伝のすごさ

<すごい翻訳>といえば、思い出す本がある。

 

 

イヴ・モンタン(渡辺淳訳)『頭にいっぱい太陽を シャンソン歌手の回想記』ミリオンブックス、1956年。

 

 

フランスの歌手イブ・モンタンの自叙伝で、新書サイズの洒落た装丁。モンタンの写真が表紙についている。もちろん、いまは絶版である。

 

30年くらい前、神田の古本屋で買ったと記憶する。値段も安かったが、タイトルの異様さが目を引いたのだった。

 

そして読み始めたら、訳文の”すごさ”に、私は面食らった。それ以来、<直訳>という言葉を聞くと、私はよくこの本を思い出す。

 

サンプルをお目にかけよう。

 

のちの大歌手イブ・モンタンが、歌の修行をはじめたころの回想である。

 

 


 

「わたしはふたたび、レコード室屋のところで過して、老婦人の耳にあんなにも哀れな印象を刻みこんだ曲、わたしの好きなトレネを歌わせた。

 

あらためてわたしは、澄み切って、自然な容易さの印象をうけた。わたしは、生々した眼をし、耳の上に帽子をかぶって、別に覚えなかった鳥が歌い、人が話すように、何の努力もなしにいかにも幸福そうに歌うトレネを想像した。

 

わたしには、そこで、自分が歌い方の本質的な問題にふれているのだということがわからなかった。すなわちそれは、骨を折った挙句、経験を積んだ末に、全的な容易さの印象を与え、ちょっと望めば十分にそうできるかのように、公衆に思いこませるにいたるのだということだ。…

 

努力は、そのままでいようと思ったほどつらく思えた。」131頁。

 


 

 

 この調子の訳文が、200ページ余りにわたってつづく。

 

 私はこれを読みながら、これでもだいたい意味がわかるという事実に、かなり深く驚いていた。

 

 しかし、私がもっと驚いたことがあった。

 

 この訳文に惹かれて、私自身、この本を最後まで読み通したのである!

 

 





 

 

| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 名著のアフォーダンス | 16:18 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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