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         大鏡


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"Relight the joy. "   スターバックスのクリスマス・コピーを解説しましょう
毎年、クリスマスが近づくとスターバックスの店頭に心あたたまるコピー(広告用のキャッチフレーズ)が掲示される。

今年のコピーは、"Relight the joy. "  だが、意味がよくわからない人もいるようだ。

以下、解説してみよう。

◯ まず、"relight" と原形動詞ではじまる、これは命令文。re- は repeat などでおなじみの接頭辞で、ここでは「もう一度」。発音は「リ」ではなく「リー」に近いくらい、しっかり言うのがコツ。

"light" は火をつけることで、ろうそくに火をつけるのも "light"  だし、電球のように内部からポッと光るのも、やはり "light " である。

◯ 次の the joy だが、joy は、声をあげたくなるほどのうれしさのことである。

theは、①世界で唯一、②その場面では唯一、③その単体のなかで唯一、という三つの<場>での唯一性をいう。 

この短いコピーでは、the joy とは、どの<場>で唯一の「うれしさ」ことなのかはあいまいである。だからこそ、"Relight the joy. "という文には、次のような豊かなイメージが埋め込まれることになる。


① 「世界で唯一の、あのjoy の光をふたたび灯そう」

たとえば、教会のロウソクの光を思い出して、救世主降誕という、キリスト教徒としてのよろこびを新たにする人がいるかもしれない。


② 「去年のクリスマスという場面での、あのうれしかった思いを心に呼びもどそう」

家庭でのクリスマス・ツリーの灯り。家族や親戚や友人が集まって過ごした去年のクリスマスのうれしさ。一年が経つうちに忘れかけていた懐かしい人たちの思い出を、また心に灯してみませんか。


③ 「あなたの心のなかで特定できる、あのよろこびにもう一度光を灯してみよう」

あなたの心という単体のもののなかで唯一の、あのよろこび。それは夫や妻や恋人にはじめて会ったときのよろこびかもしれないし、本当に好きなものを見つけて、飛び上がるほどうれしかった記憶かもしれない。




スターバックスでの日本語バージョンは、「ぬくもりを、もちよろう」となっている。これは "Relight the joy." を②の意味で解釈したもので、なかなかうまい訳である。

日本の幼児の歌に、「いつのことだか、思い出してごらん。あんなこと、こんなこと、あったでしょう」というのがあるが、"Relight the joy." というのは、それのクリスマス・バージョンみたいなものである。

訳してみるなら、


「クリスマス。あんなこと、こんなこと、思い出してみようよ」


といったところであろう。

だがしかし、これはスターバックスという飲料店のキャッチコピーであることも忘れてはいけない。

すなわち、"Relight the joy. " とは、

「以前に飲んだ、あの味を思い出して relight the joy 、もう一度飲んでみませんか?」

という誘いにもなっているという、なかなかおいしい話である。

そういえば、スターバックスの背の高いコーヒーカップは、なんだか relight するロウソクのような形だ、とまでいえば、言い過ぎになるのかもしれない。 









| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 英語 | 01:22 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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