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陶淵明・歸去來兮辭


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アメリカ版「教育勅語」は矛盾だらけ おわり
ところで、いま使われている文句には under God という言葉があるが、これはベラミーが書いた原文にはなかった。

冷戦時代の1954年、保守派カトリック団体などが議会にはたらきかけて、社会主義・共産主義を排除する趣旨で付け加えたのだという。(『どうするオバマ、さらばブッシュ』前掲、187−191頁)


しかし、もともと「誓い」の作者は under God と叫んだ聖職者であり、国家社会主義者であった。

under god という語があろうがなかろうが、「誓い」が国家社会主義と親近性をもっていたという事実は消えない。

共和党を中心に、今回の大統領選挙では「真のアメリカ人」かどうかの試金石として「忠誠の誓い」への忠誠度がくりかえしもちだされている。

ところが、冷静に考えてみれば、「保守」を自称する人々のこの発想が大きな矛盾をかかえていることは明らかである。

この記事が述べているように、「個人の自立、家族の価値、神への信仰」といいながら、同時に個人と家族の国家への忠誠を叫び、実際上、神のうえに国家を置いているからである。



"It's ironic to see conservatives rally to such a questionable custom," Gene Healy, a Cato Institute scholar, wrote in 2003, when the California pledge case was originally in the news. "Why do so many conservatives who, by and large, exalt the individual and the family above the state, endorse this ceremony of subordination to the government? Why do Christian conservatives say it's important for schoolchildren to bow before a symbol of secular power? Indeed, why should conservatives support the Pledge at all, with or without 'under God'?"

http://www.npr.org/blogs/itsallpolitics/2012/09/11/160936717/politics-the-pledge-and-a-peculiar-history





もとより、人が抱く「信念」は、このように無意識のうちに矛盾していることが多い。日本の保守にしても、現実には対米追従を当然視しながら、口では「アメリカ製の憲法」に嫌悪を示し、民族独立を追求しているかのような自己像に満足している。




1943年、米国最高裁は、「忠誠の誓い」を学校の生徒全員に暗唱を強制することは違憲と判断したが、「忠誠の誓い」が廃止されることはなかった。

それから数年後の1947年、敗戦日本では国会の議決によって教育勅語が廃止された。

教育勅語と「忠誠の誓い」は、1890年代に生まれたところは同じであったが、「忠誠の誓い」は約半世紀後に強制が違憲化されながらも生き残り、教育直後は全面的に廃止されて運命が別れた。

そして「忠誠の誓い」は、ナチスの面影さえ引きずりながら、いまもアメリカで唱えられ、「保守的アメリカ人の良心」の試金石とさえなっている。

自分よりも偉大なものに献身する自分への陶酔。

それを他者に強制するとき、人間の社会は必然的に「苦」の種をかかえこむ。

これを私は「社会苦」と呼びたいと思っている。仏教が問題にした「苦」には、個人が経る生老病死の「個人苦」だけでなく、人間集団が必然的にかかえこむ「社会苦」も含まれていたと思う。

そして政治学や歴史学のテーマは、「社会苦」の構造の解明と処方箋の開発にある。








(おわり)









| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 教育をどうする? | 10:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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