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ヒッグス粒子発見!? 仮説を検証するという「くり返し」の知恵
ヒッグス粒子の存在が確認されたか?

これがずいぶん話題になっているが、スイスのCERNは、まだ公式見解ではない("It's unofficial.")と、かなり慎重な態度をとっている。

去年の九月ごろに、光より速いニュートリノ発見!といったん発表したが、けっきょく観測上の誤認だったという話になってしまった。そのぶん、今回は断定に慎重になっているのかもしれない。



The discovery of the Higgs particle ranks as one of the most important scientific advances of the past 100 years. It proves there is an invisible energy field that pervades the vacuum of the known universe. This field is thought to give mass to the smallest building blocks of matter, the quarks and electrons that make up atoms. Without the field, or something like it, there would be no planets, stars, or life as we know it.

http://www.guardian.co.uk/science/2012/jul/04/higgs-boson-cern-scientists-discover




ヒッグス粒子の「発見」の報道をみていて感じたことをいくつか。

◯ 「大発見」というと、「ユーレカ!」(アルキメデス)と躍り上がって叫ぶという光景が思い浮かぶ。

今回の発表でも、会見会場は拍手と口笛で祝賀的な雰囲気に包まれ、ヒッグス氏は涙をふいたという。


At the end of the announcement, the room erupted into a standing ovation of whoops, cheers and whistles. Peter Higgs, reached for a tissue and wiped a tear from his eye.

http://www.guardian.co.uk/science/2012/jul/04/higgs-boson-cern-scientists-discover


「大発見」にはこういう興奮がつきものといってもよい。たとえば線文字Bの解読やヒエログリフの解読でも、「わかった!」という瞬間にはヴェントリスもシャンポリオンも興奮に包まれたという。

ただ、今回もそうであるように、大発見のあとには慎重な検証が必要であることが多い。ほんとうに大発見なのか、冷静に確認する必要がある。

私も似た経験があって、英語の音素が美しい配列をかたちづくっていることを発見したときは興奮したが、本当にこれでよいか確認するのに何ヶ月もかかった。




◯ 大きい発見とは、新しい研究分野を開く発見のことであるということ。今回のヒッグス粒子の件は、重要な仮説が実証されたというだけでなく、新しい研究分野が大きく開けたことを意味するという。

湯川秀樹の中間子論も仮説であったが、仮説が実験によって検証されたことで新しい研究分野が開けた。その功績が大きかったという。

DNAの二重らせんの発見も、分子生物学を発展させる画期になった。

祭りのあとに静かで充実した時間がやってくるのと同様、これから量子物理学の世界に充実した期間がやってくるのだろう。




じつは、社会科学・人文科学の分野でも仮説を検証する実験は可能である。

社会主義はマルクス主義の仮説を検証する実験であったともいえる。学校での英語教育は学校文法の有効性を検証した長い実験であったともいえる。

仮説とその検証のくり返し。

観念のレベルでも "History repeats itself." という命題は妥当する。

そして人間が偉大になりうるとすれば、すぐれた新しい仮説をうちたてる知恵と、それを検証する勇気と実行力をもつときなのだといえる。










| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 今さらながら現代サイエンス | 12:40 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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