ごきげんようチャンネル

あなたがたは、終わりの時にいるのに、なお宝をたくわえている。
        ヤコブの手紙 5:3    

「アフガン」という豊かさ 中村哲医師の講演から おわり
◯ <譲りながら共存する設計思想>の威力

中村医師は、「病気は後で治せるので、水が先だ」5頁、と着眼して、用水路の建設にとりかかった。

用水路は、飢餓に起因する病気を除去するのに役立つ。そういう意味で、用水路の建設は大規模な医療行為でもあった。


設計には、日本の筑後川などで利用されている「斜め堰」をとりいれた。

川を斜めにせき止める工事をおこなうことで、川底を上げることなく、高い水位で取水できる技術である。

洪水にそなえて、遊水池も設けた。

結果は、大成功。



「日本が作ったこの斜め堰の技術、この設計思想が大幅に活かされて、とにかく危ないところに人は住まない、大事なものは危ないところに作らない。自然には逆らわない。…

この設計思想が、アフガニスタンで大きな力を発揮している。」8頁




たしかに、こうした実践のどれもが、自然との正面対決を避け、自然と妥協しながら共存するという発想にもとづいている。

<問題を解決するには、自分たちが譲歩することで、紛争の原因を除去するのがいちばん良い>という考え方が一貫している。


これは、憲法九条の精神と共通している。



このように、中村医師がアフガニスタンで大きな成果をあげえた要因のひとつに、彼が日本の良さを身につけた人であったということがある。

<個性的であるがゆえに国際的>の例である。

そして、おそらく中村医師自身、こうして日本の良き部分をアフガニスタンで活かすことによって、自分自身が活かされているという実感をもっているのではないかと思う。






最後に、中村医師の言葉を。



「この27年間、いつも考え続けてきたのは、私たちは貧しい人を助けるとか簡単に言うけれど、助けられる貧しい人々のほうが明るいのはなぜなのか。

日本からアフガニスタンのために何かをしなければいけないと思い、駆けつける若者の方が暗い顔をしている。…

人間は何をもってみじめとするのか。

そして、人間としてこれは最後まで手放してはいけないものは何か。」8頁









(おわり)













| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 20:51 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「アフガン」という豊かさ 中村哲医師の講演から その3
◯ <タリバンからの解放>の背後に飢餓


2000年、アフガニスタンは世紀の大干ばつに襲われた。400万人が餓死する危険があるといわれ、中村医師たちは水とパンを配る作業を急いだ。

そこへ、2001年の9・11事件。同年10月にはアフガン空爆開始。

空爆をぬって、中村医師たちは作業をつづけ、10数万の人々に冬を越せるだけの食料を配った。




「その後、カーブルが陥落する。米軍やその同盟軍が続々とカーブルに到着した。

悪の権化タリバンを打ち破って、正義と自由の味方アメリカとその同盟軍の進駐を歓呼の声で迎える市民という映像が繰り返し流された。

これで世界がだまされた。」




そのころ、タリバン政権による弾圧を避けた「政治難民」なるもののほとんどは、じつは大干ばつによる災害避難民であった。

ところが、「あたかもタリバン政権の政策が悪く、人々が逃げてきたような、都合のいい宣伝がされたのが実態だった。」5頁


そして米軍の進駐とともに、ケシ栽培が復活し、売春の「自由」、乞食の「自由」、餓死の「自由」が訪れ、「外国人におべっかを使うのが上手で、お金を引き出すのがうまいアフガン人たちがますます大金持ちになっていく自由」がやってきた。6頁








以上のような実態について、現地の人なら、「その通りだ。なぜそういうことが伝わらなかったのか」と言うにちがいない。6頁


しかし、「その声はほとんど世界に伝えられなかったのである。」5頁










(つづく)











| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 06:34 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「アフガン」という豊かさ 中村哲医師の講演から その2
<外からの目線>は、事態を客観的に観るのに役立つ一方、<自分のための援助>の押しつけにもなりやすい。



◯ 「ハンセン病の減少」なるものの真実


先進国からみて、「ハンセン病の制圧」は現地支援の格好のテーマにみえた。

ところが、中村医師によると、ハンセン病の多発地域には腸チフス、結核、マラリアなど、他の感染病も多い。

つまり、ハンセン病だけを対象にした医療支援なるものは、現地の現実からみれば片手落ちである。

実際には、総合的な診療所を各地に開設する必要があるのだが、そうした援助の発想と理解が、援助する側にない。

そして、やがて先進国の援助が減少すると、「ハンセン病が減少した」と報道されることになった。




「実態は、ハンセン病が根絶されたのではなく、ハンセン病の診療施設が根絶されたのだ。

つまり、世界的な話題になっている間はその病気に関心が集まり、発見率が上がるけれども、関心がしぼむと[ハンセン病は] 発見されなくなってしまう。

実際、私たちが診ていても[ハンセン病が] 減ったとは思えない。」4頁




<自分たちの援助でハンセン病が減少した>という外見さえ作れればよく、現地について本当の関心をもっているわけではない。


こういう<データ>による詐欺は、原発やTPPについての「統計」や「予測」をはじめ、私たちのまわりにも多い。









(つづく)












| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 11:24 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
「アフガン」という豊かさ 中村哲医師の講演から その1
アフガンニスタンでの医療・厚生活動で知られるペシャワール会の中村哲医師の講演録を読む機会があった。



九条の会・兵庫県医師の会編『中村哲医師が語る アフガンの大地から観る明日の世界と日本』(2011年5月15日の講演録。兵庫県保険医協会発行、2011年10月、非売品)



読んでみて、アフガンという土地が「豊かさ」というものをわれわれに照らし出しているように思えた。




◯ アフガニスタンには、「貨幣を中心とする経済は存在しない。」2頁

国土のほとんどが大山脈におおわれているので、谷ごとに民族が分かれて自治をおこない、自給自足している。人口調査もおこなわれていない。

こうした状況では、たとえば国政選挙のように、われわれが「民主主義」としてイメージするような制度は機能しない。

「アフガニスタンでは、金はなくても食っていけるが、雪(⇨水)がなければ食っていけない。」3頁




◯ いわゆる「アフガニスタン問題」を海外に発信しているのは、ほんの一握り(0.01%)の、英語を話して「外国人におべっかを使うのが上手な人」たち。3頁





こうした指摘は、われわれの世界イメージが、じつは一部の者の手で作られた、たぶんに政治的で商業的なものであることを示唆している。









(つづく)
















| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 10:58 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
日本の大手メディアのトップたちと首相が密談を重ねている 高田屋嘉兵衛ならどう言うだろう
都内の高級レストランで、安倍首相はマスコミのトップたちと次々に会談しているという。

そのマスコミには、



読売新聞、産経新聞、朝日新聞、共同通信、日経新聞、フジテレビ、テレビ朝日、毎日新聞、日本テレビ



といった社名があがっている。



http://www.jcp.or.jp/akahata/aik13/2013-04-11/2013041101_01_1.html



なにが問題なの?と思う人もいるだろうが、これは深刻な問題である。


第一に、政府の代表者と、それを監視したり動向を報道したりする立場のマスコミのトップが直接会うなら、その会見内容をきちんと報道するなどの配慮があってしかるべきである。

報道を使命とするメディアのトップが権力に接触しておいて、それをみずから報道しないなら、それは<密談>であると言われても仕方がない。

権力と密談しているメディアが、他方では国民に向かって「報道」しているのである。



第二に、こうした高級レストランでの食費は誰が支払っているのか。

ある記者経験者は、おそらく割り勘ではなく、首相の「おごり」だろうと推測している(上記記事)。

もし首相の「おごり」であれば、事態はいっそう深刻である。

普通なら親密を表す行為も、立場のある人が受けいれれば、いやしい行為に堕する。

首相におごってもらうようなマスコミが、権力と対等の立場に立てるわけがない。





1812年、国後沖でロシア鑑に捕らえられた高田屋嘉兵衛は、ロシアに連行されることに同意したが、そのときロシア側に条件を出した。

それは、ロシア艦の責任者と同じ部屋で起居をともにするという条件であった。これにより嘉兵衛は八ヶ月のあいだロシア側と対話を重ね、言葉の壁を乗り越えた。

他方で、嘉兵衛はロシアと対等な立場にたつために、ロシア側の施しを拒否し、食料も衣料も自分の船から持ち込んだものだけで自弁した。

極寒のなか、嘉兵衛ら一行には死亡者さえ出たが、嘉兵衛は態度を変えなかったという。(生田美智子「ギャップを超えた同期現象的認識」『世界思想』2013年春号、3頁)




私は、このごろますます、既存の「権威」を信用しなくなった。

たいていの場合、個人としては、「えらい人」は「いい人」でもある。

しかし、組織に矜持(プライド)がなくなるとき、それは「えらい人」に大半の責任がある。

大手マスコミのトップは、捕らえられながらも相手から情報を引き出し、しかも対等であった高田屋嘉兵衛のことをどう思うか。

少しでも責任感があるなら、黙っていないでなにか言うべし、である。
















| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 08:17 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
ボストンマラソン爆破事件の容疑者、逮捕される
ボストンマラソンでの爆破事件は、二人の容疑者の死亡と逮捕でひとつの区切りを迎えた。

今後は、二人の行動の動機や背景組織などが焦点になるだろう。

ついさきごろ、ボストン警察はツイートで、次の劇的なメッセージを発表したという。


 


"CAPTURED!!! The hunt is over. The search is done. The terror is over. And justice has won. Suspect in custody."

http://www.cbsnews.com/8301-201_162-57580552/boston-marathon-bomb-suspect-in-custody-after-standoff/



英語としてやや興味を引くのは、冒頭の"CAPTURED" である。

これは<完了> We have captured him. と、<受動> He is captured. をかねたニュアンスをもち、合体して He has been captured. とも理解できる。

~en(いわゆる過去分詞)が、学校文法でいう過去でもなく、受動ともかぎらず、本来はたんに動態の<完成>を表すことがわかる例である。








| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 10:40 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
世界を騙した俗物たち、そして俗物に騙されたふりをした悪魔 おわり
こういう話を聞いていると、「情報」なるものは疑おうと思えば疑えるものが多いことがわかる。

そしてけっきょく、どれが正しいか簡単にはわからない以上、自分にとって望ましい「情報」のほうを選択してしまう危険が常に存在する。

CIA などが、イラク政府の高官の言葉よりも、ずっとランクの低いイラクからの亡命者の情報を採用したかたちになったことは、そのことを示唆しているように思える。

見逃してはならないのは、<フセイン政府は大量破壊兵器を保有している>と「確信」していた英国のブレア首相のような人物の責任である。

彼は<過失によって嘘をついた>人であるが、過失といっても、事は戦争の理由にかかわる。

首相という立場の人が、みずからの軽信を大々的に発言して多くの人を惑わせ、世界を戦争に導いた責任は、ある意味で故意に嘘をつくことと同じ、あるいはそれ以上に大きいともいえる。

彼だけでなく、この戦争を許したわれわれも、「うっかり信じただけ」「よくわからなかった」では済まされない責任がある。

この話を書いた記事は、

「ダウニング・ストリートとホワイト・ハウスが採用した情報の大半は、でっちあげと願望的思考と嘘に基づくものであった」

とまとめている。


Much of the key intelligence used by Downing Street and the White House was based on fabrication, wishful thinking and lies.

http://www.bbc.co.uk/news/uk-21786506



こうして見てくると、国家とか政府というレベルで権力を正当に行使することじたい、もともと無理があるのではないかという気さえしてくる。









(おわり)













| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 18:01 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
世界を騙した俗物たち、そして俗物に騙されたふりをした悪魔 その2
フセインが移動する車両で秘かに生物兵器を作って保持しているという「情報」をもたらしたのは、二人の亡命イラク人であった。

イギリス、ドイツ、アメリカの諜報組織はいずれも彼らの「情報」の信憑性を疑いながらも、なお完全には捨てきれず、「有力」とみなした。

彼らの「情報」が意図的な嘘であることが確定したのは、戦争がはじまったあとであった。

二人の亡命イラク人のうち一人は、「家が欲しくて」嘘をでっち上げていた。


逆に、フセインは大量破壊兵器を望んでいるが、保持にはいたっていないという正しい情報をもたらしたのは、もっとランクの高い、イラク政府高官レベルの二人であった。

そのうちの一人はフセイン政府の外務大臣で、CIA は仲介者に20万ドルの手付金を支払って彼に接近した。

この外務大臣がCIA との取引に応じたことは、仲介者が提供した特注のスーツを着て、彼が国連に現れたことでわかったという。

そしてこの外務大臣がもたらしたのは、フセインはかつて化学兵器をもっていたが、彼に忠実な部族たちに分配してしまい、現在は大量破壊兵器と呼べるものは保有していない、という情報であった。

もう一人の情報提供者は、イラク諜報機関のトップであった。彼もまた、フセインは現在使用できる大量破壊兵器はもっていないとCIAに伝えた。

これらの「情報」について、CIAないしアメリカ政府は、イラクへの攻撃を回避しようとするイラク側の策略ではないかと疑い、全面的には信用しなかったらしい。










(つづく)


















 
| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 17:40 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
世界を騙した俗物たち、そして俗物に騙されたふりをした悪魔 その1
嘘と知りながら真実であるかのように語ったり、真実と思ってうっかり述べたことが後で間違いだったとわかるー。

ものごとの重大な局面で、どちらも起こりうることである。

ふつうの犯罪では、故意と過失とでは罪の重さ(法定刑)がちがうが、歴史ではどうか。

10年前のイラク戦争では、フセイン政権が大量破壊兵器を持っているという情報が、開戦の大きな理由にされた。

今日では、イラクに大量破壊兵器はなかったことがわかっているが、10年前、開戦を主導したイギリスやアメリカの政府は、本当はどういう情報を握っていたのか。

これは今も問題になるポイントだが、BBC の記事によると、英米の諜報機関は、イラクに大量破壊兵器は存在しないという有力な情報を開戦前に得ていた。



http://www.bbc.co.uk/news/uk-21786506








(つづく)










| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 13:39 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
オバマ大統領夫人のママダンス <完璧主義>の落とし穴
オバマ大統領夫人のミッシェルさん(本人)が、忙しいお母さんを表現したダンスに出演している。


http://www.npr.org/blogs/13.7/2013/03/17/174413119/the-new-perfectionism-why-cant-we-just-be-ourselves


ところで、この画像を紹介したエッセイが、ちょっと考えさせる内容になっている。

純粋な楽しみだったはずのダンスが、肥満対策とか、コマーシャルとか、他のものの従属物として利用されるようになったのは、いつからか?

だいたい、テレビは、大人のダメさ加減を強調して、おまえはいつも空腹だ、おまえは太っている、おまえはタバコがやめられない…などと決めつける。

われわれは、ダンスをダンスとして楽しむのではなく、テレビが押しつける「完璧主義」に追い立てられている。



It's actually awkward to watch television with the boys, because almost every commercial presupposes the imperfection, inadequacy and misery of adult human being. We are targeted as overweight, as lonely, as unable to perform sexually, as depressed, as unable to stop smoking. We are displayed to ourselves as unhappy.

What is going on here?




この「完璧主義」は、おそらく啓蒙主義にはじまり、かつての伝統や宗教にかわる「価値の源泉」として、われわれを駆り立てているのではないか。



The New Perfectionism, probably, is a perverse extension of a trend that goes back to the Enlightenment, with its unbridled individualism and rejection of tradition and religion as a source of value. We carry the burdens not only of living, but of deciding for ourselves how we ought to live, what sort of life counts as good.



この観察は、なかなか鋭いところがあると思う。

ただ、われわれはマスコミやコマーシャルが毎日流す<理想>のイメージから逃れることはできないし、<あれもこれも>が理想であることじたいを否定することはなかなかできない。

肝心なのは、自分の理想を自分が決定する態度であろうと思う。

人がいいと言うから、コマーシャルが宣伝するから、ではなく、自分の生き方として、その理想を吟味し、良いと思ったら自覚的に受け入れて、それを生きることだと思う。

その前提があれば、<あれもこれも>でさえ、ひとつの自覚的な生き方になりうる。

自覚的に選びとった理想であるかぎり、それは自分の力になるし、変更も可能になる。










| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | マスコミあかん論 | 06:33 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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