ごきげんようチャンネル

"Life is too short to wake up with regrets." author unknown
           

英語による世界認識は生老病死(四苦)である
仏教で、生老病死(四苦)という。

この四つは、人生で避けることが不可能なもののリストである。

人間の一生は、誕生という偶然ではじまり、成熟(老)と衰退(病)という変化を経て、死という必然で終わる。

英語による認識の型を整理していて驚いたのだが、英語の文は実体(まとまりのあるもの)の<出現・変化・定着>という、この世のあらゆるものの普遍的なあり方を直接に表現する体系で成り立っている。

英語による世界認識は、ずばり、<生老病死(四苦)>なのである。

きっと他の言語による認識の基本も似ていることだろう。



(英語の認識の型を解明した私の論文は、6月ごろ刊行予定です)










| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 09:41 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
ゴルフの「入れ!」は英語でなんという? おわり
では、残った in のほうはどうか。

Go in! という表現は、よくみるとgo とin が一連の事態のそれぞれ違う局面 phase を述べている。

go! は、ボールがコロコロと転がっている局面が対象である。

それに対してin! は、①カップの中へという運動の方向と、②ボールがカップに入り込む瞬間と、②ボールがカップに収まり終わった状態、の三つを一語で表現している。

Go in! と叫んでいる瞬間には、上記の①は現実だが、②と③は「もうひとつの自己」が観念的に運動して、これから起こってほしい事態を先取りしているのである。

こうしてみると、Go!  だけでも In! だけでも、「入れ!」がもっている意味の一部を表現できることがわかる。むろん、ふたつ合わせて Go in! と言うのが、事態の全局面を言い尽くした表現となる。

言語の表現は、「もうひとつの自己」(言語能力)がもつ、こうした細やかで、時空を自在に飛べる認識力を土台にして成り立っている。

「もうひとつの自己」の力を実感することは、言語を学ぶ醍醐味のひとつであり、十代から知っておくべき教養だと思う。








 
(おわり)








| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 08:12 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
ゴルフの「入れ!」は英語でなんという? その3
<ボールに自己の分身の群れが乗っかっている>というのは、冗談で言っているのではない。

人間はもうひとつの「自己」を絶えずあらゆるところへと派遣し、対象にした実体にとりついて言語化することで肉体的限界を突破している。

「昨日、晩ご飯のときにね…」

と言い出したとき、すでに私たちのもうひとつの「自己」は「晩ご飯」を前にしている。「昨日の晩ご飯」はもはや存在しないのに、私たちは存在しないものをたちまち目前にする。

「もうひとつの自分」の作動によって言語が可能になり、それによって人間は自分が住む世界を圧倒的に拡大できる。

この事実を、三浦つとむは「観念的自己分裂」と呼んだ。

ゴルフボールに向かって、みんなで

Go!

と叫ぶとき、みんなの肉体から分裂した無数の「自己」がひとつのボールの上に集まり、ボールといっしょにコロコロと転がっているのである。








(つづく)









| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 08:11 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
ゴルフの「入れ!」は英語でなんという? その2
おもしろいのは、Go in! というたった二語の表現に言語の根本的な秘密が詰め込まれていることである。

まず、go! というのは、ボールに向かって言っていることに注目したい。

野球やサッカーではボールを扱うプレーヤーがめまぐるしく変わるが、ゴルフでは一人一回ずつ順番に打っていくので、どの打球がどのプレイヤーのものであるかが明確に認識できる。

ゴルフでは、ボールは明らかにプレイヤーの分身である。

プレイヤーはボールという自己の分身をカップに向かって放つ。

そしてみんなの期待を集めて転がるボールには、みんなが発した<分身>が、群れをなして乗っかっているのである。










(つづく)









| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 08:10 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
ゴルフの「入れ!」は英語でなんという? その1
ゴルフで使う英語は、言葉というものの仕組みをわかりやすく教えてくれるところがある。

たとえば、ギャラリーが見守る中、プロがカップに向かってパットした瞬間、みんなで「入れ!」と叫ぶ光景がよくあるが、あれは英語で、


Go in!


と言う(マーシャ・クラッカワー『気楽にゴルフ英会話』NHK出版、1994年、98頁)。

これは日本語に似た言い方なのでわかりやすいが、ここで注目すべきは、「前置詞」である inの次に何も言っていないこと。

これは Come on. などと同じで、言わないほうが自然である。

状況上、「目的語」が自明の場合は省略することでかえって納得する。それが生きた言葉というものなのだ。

(現行の英文法では、「前置詞」に目的語がない場合、名詞に「前置」しているわけではないので、「副詞的小辞」などと名前を変えて呼んでいる)







(つづく)












| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 08:06 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
スペースシャトル・エンタープライズの退役
最新のタイム誌に、退役したスペースシャトル「エンタープライズ」が自由の女神の前を通り、ハドソン川を運搬されていく写真が載っている。






あらためて見るとエンタープライズの船体はかなり巨大だ。

その巨体が任務を終えて博物館へと運ばれていく姿は静かな感動を呼ぶ。




ところで、写真についたキャプションを見て気がついたのだが、ひとつの文に前置詞が七個ついている。





Enterprise の運搬の様子を by、past, up, en route to,  という四つの角度から述べ、さらにその場所や時間について at, on, in の三つの角度から一気に述べている。

英語では重みのある要素を文尾に置くことで文が安定する。

ひとつの実体につき七個の前置詞をもって認識を補完する文体が可能なのも、on、in、atを中核とする前置詞の秩序があるからである。











| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 06:35 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
金さんミサイルで前置詞レッスン
米スタンフォード大のアジア問題専門家が今回の北朝鮮ミサイル発射についてコメントした文があって、これが文法的におもしろかった。

短い文だが前置詞のオンパレードで、それぞれの原義が活用されている。

"So I think it's much more important to them, much more logical for them, to try and put a threat at U.S. forces in the region, not to seriously threaten the United States with an intercontinental ballistic missile," he says.

http://www.npr.org/2012/04/11/150438390/n-korea-may-stage-nuclear-test-after-rocket-launch


it(北朝鮮によるミサイル発射)は them (北朝鮮当局)に対してimportant であって、これは to(客観的に確定)の関係である。important to them.

しかし同じミサイル発射がthem に対してlogical かどうかは、toというより for (主観的に可能)な関係である。logical for them.

そしてit(ミサイル発射)はいろいろ標的があるなかで米軍をねらったもの at U.S. forcesである。それも東アジアのどこか in the region にある米軍である。put a threat at U.S. forces in the region.

ミサイルの標的は東アジアの米軍であって、大陸間弾道ミサイルを利用して with 米国を脅かすことが主目的ではない。not to seriously threaten the United States with an intercontinental ballistic missile.

もう一度原文を載せておこう。

"So I think it's much more important to them, much more logical for them, to try and put a threat at U.S. forces in the region, not to seriously threaten the United States with an intercontinental ballistic missile," he says.





| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 07:18 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
観念的関係を表す前置詞 forとof おわり
◯ まとめ

forとofはペアである。

発音の類似性(逆から読むと他方になる)も示唆的であるが、最後にforとofがどのような意味でペアであるかをまとめておく。

まず、forとofは<実体1>と<実体2>の観念的な関係を表すという点で共通している。

<観念的>というのは、forもofも対象を物理的に扱うことはなく、常に頭の中だけで扱っているということであり、この点はいくら強調してもしすぎることはない。

たとえば、"a present for you" (あなたへのプレゼント)や "the lid of the box" (箱のふた)という表現は一見すると対象どうしの物理的な関係を述べているようだが、これらはプレゼントとあなた、ふたと箱について話者の頭の中で関連づけているだけで、物理的には一指も触れていないし、対象どうしが物理的に一体となっている必要もない。

forの観念性を示す例をもうひとつあげよう。

This message is to you. 

This message is for you.

上記のふたつの文はどちらも成り立つが、意味は同じではない。

to you であれば、宛名が書いてあるなど物理的な直接的関係を表すが、for you であれば、メッセージの主旨(観念)が<あなたに向けたもの>であることに力点がある。

さらに、

a message of hope   「希望のメッセージ」

であれば、メッセージの素材(内容)が希望そのものであるということであり、もっぱら観念的な関係を表す。

a glass of water    「コップ一杯の水」

の場合、たしかに物理的な関係を基礎にしているが、より本質的なのは、水water を素材にしてa glass(ガラスのコップ)が成立していることを観念の力によってとらえた表現であるということである。

多くの前置詞が物理的(空間的)な関係を基本の意味とするのにたいして、このようにforとof は徹底して観念的関係を表す点で、きわだった特徴を共有している。

次に、forとof が対称的である点として、forの場合、<実体1は実体2のほうを向いている>のに対して、of の場合、<実体1は実体2を背にしている>ことがあげられる。

言いかえると、for は<目標=実体2に接近して>が原義であり、of は<母体=実体2から抽出して>が原義であるということである。

元来、forでは<実体1>と<実体2>は別物であり、ofでは<実体1>と<実体2>は一体のものである。

そして、別物をあえて関連づけようとすれば観念的に接近させるしかないし、一体のものをあえて分離しようとすれば観念的に抽出するしかない。この根本的事情の上に、forとofの原義が成立しているのである。

ほかにもforとofのあいだには、

時間的/無時間的
主体的/客観的
価値的/非価値的

といったニュアンスの違いがある。




そもそも、前置詞の語義がいかに巧みに分類できたとしてもそれで万事が終わるわけではない。

最良の分類とは、誰もが個々の前置詞を根本から理解でき、多様な場面で使いこなせるようなメソッドが作れる分類のことである。








(おわり)








| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 06:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
観念的関係を表す前置詞 forとof その14
離脱

ofの用法のなかでもわかりにくいのが、除去や奪取の意味の動詞とともに使うof である。

除去・奪取の動詞は、<実体1 has 実体2>の状態にある実体1から<実体2を除き取る>という意味を表す。結果として、

<実体1 loses 実体2>

となる。これを<実体1>からみれば、<実体2から離脱する>という関係をof が表していることになる。

除去・奪取の意味の動詞がof をともなうのは、of が離脱のoff と語源を共有することと関係がある。

以下のof は、いずれも<実体1 has 実体2>だったものが<実体1 loses 実体2>の状態へと変化する、すなわち<実体1が実体2から離脱する>という観念的な関係を表している。

He cleared the road of snow.       道が雪を持っているのを除去する(道からみれば、雪から離脱する)→「雪かきをした。」

I robbed him of the knife.          彼がナイフを持っているのを奪い取る(彼からみれば、ナイフから離脱する)→「彼のナイフを奪い取った。」

They deprived him of his power.    彼が権力を持っているのを剥奪する(彼からみれば、自分の権力から離脱する)→「彼から権力を奪った。」 

上記の文は<実体1>を主語にして、いわゆる受動態で簡潔にすることもできる。

The road was cleared of snow.

He was robbed of the knife.

He was deprived of his power.

通常、除去・離脱の動詞とされない動詞でも、観念的に離脱がイメージできるときはof を使って不自然ではない。

I did not expect it of him.        それが彼を持っている状態から、それを心で引き離す(それからみれば、彼から観念的に離脱する)→「彼にそれができるとは思わなかった。」 

No good will come of it.      それからゼロの善が離脱してくるだろう→「そうしてもなんの得にもならない」








(つづく)









| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
観念的関係を表す前置詞 forとof その13
意味上の目的語

<実体2>が<実体1>の意味上の目的語の関係にあることを表すof。<実体1 of 実体2>が、いわば<V+O>の関係にある。

 これは<実体1>が他動詞的な意味をもつため、<実体2>にその目的語となる語を置いて意味を充足させるのである。

<実体1>の行為の起源・素材が<実体2>から抽出できるところから発達した表現である。

the Declaration of Independence   「独立宣言」。[We] declare independence. のような文意をコンパクトに名詞化している。

criticism of the police     「警察に対する批判」。criticism には criticize という他動詞が潜在していることから、 [They] criticize the police. のような文に相当する意味関係が内包されていることになる。

his paintings of Monet    「モネを描いた彼の絵」。 He painted Monet.  のような文が背景にある。なお、「モネが描いた絵」なら a painting by Monet となる。

his love of nature    「自然に対する彼の愛情」。 He loves nature. のような文意が前置詞句によってコンパクトに表現されている。

a photo of my dog  「私の犬を写した写真」 [Somebody] photoed my dog. のような文を内包する前置詞句。

the examination of the patient   「患者の診察」。   [They] examine the patient. のような文意が内包されている。

the payment of the debt      「借金の返済」。 [They] pay the debt. のような文意が入っている。

fear of the dark        「闇への恐怖」。[They] fear the dark. のような文意の前置詞句によるコンパクトな表現。


この形のバリエーションとして、<実体1>と<実体2>のあいだに自動詞や形容詞が入り、<実体2>があたかも自動詞や形容詞の”目的語”のような関係になる場合がある。いわば<V・C+O>の関係である。

<実体1>が、<実体2>を素材にして自動詞や形容詞の動態・状態にあることを述べることから発達した用法である。

主語(実体1)の自立的な行動や意識・感情を表す自動詞・形容詞は元来目的語をとらないが、それにあえて目的語類似の実体を付加するof で、日本語の「〜について」という表現に似た概念となる。

Think of number, any number.   数字について考えてください→「数字を思い浮かべてください。どんな数字でも結構です。」

speak [talk] of health  「健康について語る。」

I wonder what became of her.     何が彼女についてなったか?→「彼女はどうなったのだろう」。補語はとるが目的語はとらないbecome に、目的語類似の<実体2>を付加するためにofを用いている。become of は、what, whatever を主語にして、心配・困惑を表すときに使う。

be proud of her daughter's success.    「 娘の成功について誇りをもつ。」

be aware of the fact.     「事実について気づいている。」

I'm not sure of his address.   「彼の住所について確信がない。」

be tired of her excuses   言い訳についてうんざり→「彼女の言い訳にうんざりしている。」








(つづく)









| 三浦 陽一 (みうら・よういち) | 新しい英文法を考える | 11:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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